夢の丘
テルグ映画(インド/アンドラ・プラデーシュ)
<南インド地方映画の特色>
◆ドラヴィダ系文化の南インド4州(アンドラ・プラデーシュ、タミルナードゥ、ケーララ、カルナータカ)
の映画には目に見えた共通点があります。まず、その点についてヒンディー映画と比較しながら簡単に書いておきます。
◆最初に何と言っても音楽です。(ここで説明する「音楽」は、あくまで「南インド地方映画の音楽」であって、
古典音楽とは関係ないことに注意してください。)
一言で言うとムガル色を意識的に(?)排除しようとでもしているのか、民族音楽としての特色が薄いものです。
ちょうど、タイやインドネシアあたりの南国系のトロンとした民謡を思い起こさせます。
さらに具体的には、バックの和音の流れと歌の旋律とがきっちりと噛み合ったものではなく、
作曲する側の立場にたつと簡単に大量生産できるタイプの音楽と言えるでしょう。
その辺の映画音楽としての弱点を補うためか、露骨に欧米の音楽の模倣した曲を多用したりするのが、
現時点での南インド地方映画の特色になっているようです。
◆また、映画の内容自体でヒンディー映画と比較して明らかに目に付くのが、
CGや映像処理上のギミックの多用です。(とくにタミル、テルグ映画)。
これは近年の香港映画などでも言えることかも知れませんが、
それらの特殊処理を手段として使うのではなく、それ自体を売り物にしようという意図が感じられるもので、
ハリウッド映画やヒンディー映画などがそういう姑息な方向に走らずにどっしりと構えているのに対して際だった特色になっています。
<テルグ映画について>
◆私見ですが、南インド4州の映画のうち、テルグ映画とタミル映画は雰囲気が似ていて、
現時点でやや質的に完成度の高いものを作っているのがテルグ映画のほうだと思います。
また、この州ではケーララやタミルナードゥほどにはヒンディーに対して排他的ではなく、
ヒンディー映画の人気もかなり高いようです。
なお、1998年末の時点では、
どこの映画館でもヒンディー映画のトップ女優でもあるTabu出演のCMが映画の前に流れていたのが印象的でした。
◆現在テルグ映画界のトップ男優と言えば、まずこのChiranjeevi
でしょう。左の写真は、1998年秋封切りのテルグ映画
「Choodolani Vundi」(君に会いたい)
です。ヒーローはChiranjeevi、
ヒロインはSandharia。
セカンド・ヒロインとしてヒンディー映画でも活躍しているAnjala Zhaveriが出演してます。
さらに、ヒンディー映画女優としてかなり名が売れているUrmila Matondkarが1曲だけゲスト出演してヒーローと踊ります。
カセット屋の宣伝ポスターでは、一曲だけ出演のUrmilaの大きな写真が使用されていました。
(ストーリー)
ギターを抱えた渡り鳥風のChiranjeeviが、ハイデラバードからカルカッタに出てきて、
Sandhariaのいる住まいで下宿生活を始める。そこでChiranjeeviの過去について長いフラッシュ・バック・・・・・。
かつて大金持ち実業家の娘Anjala Zhaveriと恋におちた彼は、
悪から逃れ山の中の家で生まれた子供と三人で幸せに暮らしていた。
ところがある日、Anjalaの父に見つかりAnjalaは連れ去られる。
Anjalaを取り戻すために訪れたChiranjeeviに逆ギレした父親はピストルを発射。
その瞬間、彼を救うために弾丸の前に飛び出したAnjalaが犠牲になって死ぬ。
罪をかぶせられたChiranjeeviは息子を取り上げられてしまう・・・・(以上フラッシュ・バック)。
実はChiranjeeviは、その息子を探してカルカッタにやって来たのだった。
・・・・最後に悪を退治して息子も取り戻した彼は、
ハイデラバードに戻るときに思いを寄せていたSabdhariaと結ばれる。
映像の美しさで勝負しようというところは他の南インド映画とも共通した特徴と言えるでしょう。
ただ、やはり音楽がなんとも弱く、その辺がヒンディー映画と比べて大きな減点対象。
また、アニメを組み合わせた「いかにも南インド映画」という特撮のミュージカルシーンも鼻につきました。
ストーリーの完成度から考えても、この映画は総合的に見て南インド地方映画としては最上の部類に入ると思います。
◆Chiranjeeviと並んで人気のあるテルグ男優がこのVenkatesh
です。とにかく南インド4州では、映画スターは熱狂的に崇拝される傾向にあります。
地元の同じ言語を話すそれほどハンサムではない男が銀幕のスターになって活躍しているというところに、
南インドの人々は感情移入しているように感じます。
このVenkateshについても、多くの映画館でファンクラブの大きな横断幕を見かけました。
写真は、1998年秋封切りのテルグ映画
「Premante Ideraa」(愛とはこんなもの)
です。ヒーローはVenkatesh、
ヒロインはタミル映画監督があえてヒンディー語で作成した映画「Dil Se」
に出演したことで広く知られるようになったPreity Zintaです。
(ストーリー)
一言で言うとヒンディー映画の歴史的名作「DDLJ」と同じストーリーです。
ヒーローが婚約の決まったヒロインの家で愛想を振りまいて家族から気に入られ、
最後にはヒロインの父親から結婚を許されるというもの。
映像の美しさで勝負、音楽の決定的な弱さ、特殊映像処理をほどこしたミュージカルシーン、など典型的な「南インド映画」です。
なお、脇役としてShah Rukh Khanのそっくりさんが「DDLJ」風にマンドリンを抱えて出演しています。
この映画も南インド映画としては、非常に完成度の高いほうだと思います。
◆写真は、1998年秋封切りのテルグ映画
「Tholi Prema」(初恋)
です。ヒーローのPawan KaranはChiranjeeviの弟、
ヒロインはKeefty Rediという新人です。
非常に単純なラブストーリーを、映像の美しさで誤魔化すという典型的南インド映画。
音楽の弱さはやはり致命的。いわゆるインド的な要素は皆無で、全国ネットで放映されている有名なヒット曲をぱくったりしています。
また、ヴァンゲリスのアルバム「天国と地獄」の中のメロディーが繰り返し使われていましたが、
あのメロディーには別に元ネタがあるのでしょうか?よく分かりません。
そして、ここでも特殊映像処理をほどこしたミュージカルシーンが・・・。
綺麗な画像をぼんやり眺めてうっとりしたいという人には良い映画かも知れません。
この映画、ハイデラバードではなぜか大ヒットになっていました。
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