大阪・南九州紀行―6―


九州最終日。雨。豪雨と雷雨のダブルパンチ。この日の夜7時に大阪へ向かうフェリーは宮崎港を出発します。それまでには時間もあることなので、友人の運転で綾・酒仙の森へ。何でもここのレストランのランチバイキングを、先日は時間が合わなくて食べられなかったとかで、今日はその雪辱戦らしい。今日こそたらふく食べるのだと、朝から張り切っている。

都城から宮崎方面に向かう国道10号線ですが、雨のためにあちこちで冠水してたりして、どえらいことになってます。対向車が巻き上げる水たまりの水をまともにかぶり、前が見えなくなったりすること度々。いややなぁ……と思う。こんな道、こんな雨の中で走るんかいと考えると憂鬱になります。ホンマに。

宮崎県・綾町は照葉樹林の原生林が残る、国内でも貴重な自然が残る地域です。町づくりも自然という財産を生かした形で進められており、しかも見事な成功を収めている。酒仙の森は地ビールやワイン、焼酎などの製造工程を見学できるだけでなく、地元に伝わる竹細工や染色・織物、陶芸など、綾町の自然と人々が育んできた様々な物品の展示即売をしています。また若手の陶芸家やガラス職人を招いて工房を開くなどといった、積極的な活動を続けてもいるんですが、その全てが綾町という自然に恵まれた地域を基本的なコンセプトとしているので、いずれを目にした時にも違和感を感じたりはしません。この辺がすごいです。

一般に地域の活性化事業は多くの利権とか利益とかそんなものが絡んで中途半端なものになりがちですが、綾町はそういった部分が、少なくとも司書には感じられませんでした。大勢の人が関わると、それだけ希望や思惑といったものが増えてしまい、皆が我を通そうとする。それが地域の活性化事業の足を引っ張ることが少なくないのですが、綾町の事業の中核となった人たちは、そういったものを創意工夫と誠実な姿勢で解決したのでしょうね。そう信じられる暖かさを感じました。

で、この日は団体見学者がレストランを借り切ったので、ランチバイキングにはありつけず。友人と互いの日頃の行いの悪さを責め合い、嘆き会う。途中のファミレスで食事。

綾城は綾で育った木材をふんだんに使った素晴らしい建築でした。規模こそ小さいものの、建物のそのものの持つ存在感が抜群。先日見学した熊本城に勝るとも劣りません。結局のところ、城郭というのは地元の人たちに愛されてこそ、その価値が生まれるのかもしれないとも思う。

友人宅に戻り、出発の準備をする。雨は相変わらず。雷雨も豪雨も元気で嫌になったり。雨合羽を出して、タンクバックの中の荷物を必要なものだけにし、他のものは全てリアシートにくくりつけるバックに詰め込む。友人のお母さんから夕飯用のお弁当をいただく。雨足が強いので、宮崎自動車道で宮崎港を目指すことに。高速料金は必要ですが、安全を買うのだと思えば安いもの。10号線の山越えは、あまりにも危険だと思う。これから暮れるわけですしね。ご家族の皆さんにお礼を言い、友人の先導で高速道路へ。

九州自動車道は雨のために速度規制が敷かれており、最高速度は50キロだ。雨が太股やら手やら腕に当たって痛い。寒い。左車線を時速80キロで走行。追い越し車線を自動車が通過するたびに水を頭からかぶる。宮崎の料金所から一ツ葉有料道路を経て宮崎港に到着。乗船手続きをして一服。ほどなく乗船案内のアナウンスが聞こえ、駐車場に移動する。雨は相変わらず強い。自動車に混ざって並んでいると、バイク先行乗船の指示が出る。雨が降ってるので温情対応でしょうな。ライダーは司書を含めて4名のみ。バイクを車輌甲板に留めて船室に移動。びしょぬれの身体を風呂場で温めて夕食のお弁当をいただく。午後7時過ぎ、船は宮崎港を後にする。

翌朝の大阪南港は曇天。バイクで家を目指す。雨は降ってなかったけど、半乾きのカッパをバッグに入れるわけにいかないので、多少の気持ち悪さを我慢して雨合羽を着込んでました。


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