リベンジ・北海道紀行―5―


北海道の朝は早い……というより、一人旅で、しかも一人酒を嗜まないからかもしれませんが、旅行中は基本的に早寝早起きを敢行しています。

昼間、あちこち知らない街や道を走りたおしたり観光しまくったりするせいで、宿に到着する頃にはすっかり疲れていまして、それこそ晩ご飯と風呂が終わったらテレビもそこそこに熟睡こいてしまって、その反動で翌朝は遅くても6時半頃に目が覚めるんですが、洗顔とか荷造り、朝食をゆっくり済ませても7時とか7時30分とかで、朝の宿で何かできるわけでもないので、ちょっと早めに宿を出ることになります。ダラダラ車を、或いはバイクを走らせても10時頃までは店も観光名所も準備中なので3時間くらいは走ってるだけって感じです。

美深から目指すは札幌。とりあえず国道40号線をひたすら南下して、美瑛経由で富良野まで。この辺りの道は北海道をテーマにした広告物とか、まぁ、北海道の象徴のようなまっすぐな道とかどこまでも続く畑とか牧草地とかラベンダー畑とかキタキツネとか牛とか、まぁ、そんなわかりやすいアイテムを揃えた風景が次々目の前に広がる、いかにも北海道というような地域です。

緑の中を走るのは実に爽快で、この時ばかりはバイクだとよかったなぁなどと思いつつ、そここにある休憩所とか展望台とかで休憩しつつ上富良野入り。

けっこうな距離を走ったのにまだ昼時には早かったので、十勝岳を目指してみた。上富良野から十勝岳に向かう道路はキレイに整備されてはいますが、やはり峠というか、日本でも名だたる名峰につながっているだけあって、途中でかなり勾配が急になったりして、おまけに所々は自動車の対面通行ができないくらい狭かったりしまして、どうにかするとセカンドギアで登る場所もありました。それでも結構楽しめるのは、標高が高くなるに連れて少しずつ変化する植物群生の様子だったり、かつての噴火の名残をとどめる溶岩性岩石群の野性的な岩肌だったり、そこに芽生えている植物のたくましさだったりします。

山道をグルグル登った行き止まりに十勝温泉がありまして、ここは十勝岳の登山道の入り口でもあります。この日、北海道内陸地域はかなり気温が高くなっておりましたが、さすがにここまで登ると空気に程良い具合に冷やされた、緊張感のようなものがありました。寒くはないけど、こうね、気持ちが引き締まるような、そんな感じです。雄大な岩肌を背景に、眼下には肥沃な十勝平野が広がるという、何とも贅沢な風景を堪能しました。

十勝岳を後にして日高方面へ。これまた教科書の中でしか知らない日高山脈越えを敢行。国道237号線を南下するルートはかつての原生林を切り開いて造られており(といっても、北海道の幹線道路の大部分が開拓民の手で開かれていますが)、今も両サイドには豊かな緑が控えていて、実に爽快です。程良いコーナーが連続しているので、私でも初夏のドライブってのを満喫しました。

美深から日高、夕張までのルートでは実に大量の自衛隊車輌とその隊列走行に遭遇しました。兵器はもちろん、一般車両の種類にも疎いほうですからジープとかトラックとか補給用タンク車とかの識別はできますが、それ以上詳しいことはわかりません。でも、大型ジープの何台かに小型砲台らしきものが据え付けられていたり、幌つきトラックの幌全体にネットがかけられていて、そこに明らかに作り物とわかるツタの葉がつけられていたり。映画などでは知っているカモフラージュトラックの本物、初めて見ました。

関係ないけど、自衛隊のトラックは基本的に法廷速度を守っているので、この手の一団の最後尾につくと楽に走れます。さすがに気の荒い一部のトラックドライバーも、自衛隊車輌にはちょっかいを出さないみたいなので、山道とか峠越えで遭遇した時には嬉しかったり。それから自衛隊のバイク部隊にも遭遇。軍隊には伝令や斥候用のバイクがあるのは知識として知ってるし、当然自衛隊にもあってしかるべきだと言えるんですが、実物を見るのは初めて。標準的な隊服に編み上げ式ではない長靴、革手袋、ヘルメットはハーフタイプでゴーグル使用。更に防毒マスク状の顔面プロテクターを装備している姿は、なかなか威圧感がありました。バイクの場合、むき身でそこそこのスピードを出してるし、車みたいに窓を閉めて汚染された空気や雨とかを遮断できないので、自衛隊という組織の特性上から考えても、これだけの装備は納得できるものではありますが、それでもやっぱりスゴイやと思う。因みにバイクはダークグリーン(所謂自衛隊色)のオフロードタイプ。ぱっと見からして排気量は400CC未満ってとこかなぁ。割と小振りでした。

日高峠から国道274号線で夕張方面へ。しかしメロンのシーズンにはまだ早かったみたいでした。夕張炭坑博物館に立ち寄るつもりでしたが、どうにも見つけられたなかったのと、日が暮れないうちに札幌に入りたかったので適当に切り上げて、千歳経由で札幌を目指す。

北広島が近づいてきた辺りでそらにはヘリコプター。報道機関所有らしき民間機と、自衛隊機がやたら飛んでるし、自衛隊車輌――これもまた初めて見たステーションワゴンタイプ――が走ってて、北海道は日本領土の北の要ということもあり、自衛隊施設が多いってのは知ってたけど、ホンマに普通に自衛隊の車があるんやなと妙な感心をする。

北広島から札幌に入ったところで、方向を見失う(笑)。

札幌市内は新しい街なので、道路が碁盤の目状に走っております。で、こういう道に慣れていない司書は重度の方向音痴ぶりを発揮。こりゃまいったと、最寄りのコンビニエンスストアで道を尋ねる。悪運強いことに、目指していた方向はあながち間違ってはいなかったらしくて、何度か曲がるだけで宿のあるすすき野へ到着。ネットで探した一番安いビジネスホテルは駐車場完備。基本的にバイクは駐車場の心配をしなくていいんですけども、歩道とかに停めるよりも安全で車体の出し入れが楽だってことを知ってからは、選ぶ余地がある時には駐車場のある宿を選んでます。で、今回は急遽車で来ることになったこともあり、駐車場のある宿にしてよかったと思うことしきり。

チェックインして休憩して夕食のために歓楽街・すすき野に出撃。昼はラーメン、夜も下手したらラーメンを食べる生活が続いていたので、フロントのオネーサンにお勧めのお店を尋ねて、女性一人でも気軽入れる居酒屋さんを紹介してもらう。カウンター席で白いご飯とタコの唐揚げ、ザンギ(鶏の唐揚げ)、汲み上げ豆腐、もずく酢を注文。突き出しはイカの塩辛みたいなん。どれもご飯のおかずというよりも酒の肴ですけども、飲み助の父親のおこぼれをもらってたせいか、ご飯のおかずに楽しめるんです。隣のオッチャンは不思議そうに見てたけど(笑)。

宿と店を往復する間に、すすき野名物の客引きのオッチャンとかオニーサンとかを見かける。ビジネスマンらしき人達は声かけられたり、肩叩かれたりして、「いい娘がいますよ」ってなお決まりのセールストークを聞かされてたりして、たいていの人は客引きを振りきってるんですが、一人二人引っ掛かる人もいた。あ〜あ、ぼったくられるぞぉとか思いつつ、でも擦れ違う戦闘服でドレスアップしたお水系のオネーサンの香水に浮かれて、そんなことも忘れたり(笑)。実はキレイにお化粧した夜の蝶々さん大好きです。見かけるだけで嬉しい。深いスリットの入ったワインレッドのロングドレス姿のオネーサンと、キリッとまとめた髪と切れ長の瞳が印象的な和服の……年の頃なら40歳くらいかなぁ……その人がすんごいキレイやと思った。

途中、地元のスーパーでお茶とか朝食用のおにぎりとかを買い込んで宿に戻り、ミツグさんに札幌到着の報告電話を入れてから就寝。


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