P H I L L I P K I N G

フィリップ・キング展
1997年11月6日(木)〜25日(火)
東京日本橋高島屋
6階コンテンポラリーアートスペース


ごあいさつ 

 このたび、日本橋高島屋コンテンポラリーアートスペースで
は、現代イギリス彫刻界を代表する一人、フィリップ・キング
氏による陶芸作品展を開催いたします。
 ヘンリー ・ ムーア、アンソニー ・ カロに次ぐ世代の筆頭とし
て世界的な活躍を繰り広げる氏が、昨今ロンドンと鎌倉のスタ
ジオにおいて、陶芸作品に創作領域を広めたことは大きな話題
となりつつあります。
 今回、我国において、その成果が遂に明らかになる機会が到
来いたしました。
 何卒ご高覧下さいますようご案内申し上げます。

               
 1997年11月 日本橋高島屋美術部--





 フィリップ・キング展によせて

深井 隆  

 イギリスの彫刻家フィリップ・キング氏の作品を知ったのは、予備校に通っていたころに古本屋で購入した美術手帖によってだったと思う。
 1969年 5月号のページを開くと、当時新進の彫刻家として紹介されている彼の作品は、幾何学形体を構成した形と、落ち着いたそれでいて強烈な色彩が“そうならなければいけなかった”のごとく必然性を持ち存在している。それらの作品はある種の哲学性を見る者に感じさせる。深いブルーの数個の階段状の、今でいうインスタレーションされた 「青い炎 」 、ヴェネチアビエンナーレに出品された「ナイル河」など、今でも私の心に強く残っている。
 はじめて フィリップ ・キング氏の彫刻を目にしたのは、1982年に東京都美術館で開催された[今日のイギリス美術展]によってだった。その作品は鉄とスレート石を組み合わせたもので1960年代の作品に比べ、荒々しい表情を持っていた。作品の前に立った私は、彫刻と正面から格闘している作家の姿をそこに見た気がした。
  ところで1985年私はイギリスに留学することが決まり、運よくフィリップ・キング氏が教授をしていた大学に 9か月ほど滞在することができた。それに彼のアトリエや自宅も訪ねることもでき、公私ともども彫刻家と接することができる幸運に見舞われたのだった。
  そのようなこともあってその後、キング氏が個展をやったり作品を設置するため来日した際にお会いしていた。 5〜6年ほど前からキング氏は年に 2〜3か月ほど滞在し、土による彫刻を始めた。初期の作品もイマジネーション豊かで大変おもしろいのだが、滞在を重ねるたびに氏の求める 「形」が明晰さを増していった。滞在中に気付いた疑問はイギリスに帰り解決をみいだし、また次の滞在へと前進していった。ある年の滞在中に、小さな博物館で縄文の火炎土器を見学にいっしょに行ったが、彼の創作に対する限りない情熱と研究熱心さ、それに知識の深さをあらためて垣間見て、驚いたことも思い出される。

 今夏、彼はイタリアのフィレンツェで大きな展覧会を行った。そのパンフレットに載っている最新の彫刻を見ると、彫刻を通して思索をし続けてきた作家が、 90年代から始めた土と火による造形を経て、また新しいステップを踏み出したように思える。
 フィリップ・キング氏にとっても、今回の展覧会に出品される土による作品群はとても重要なものだと思う。そして私たちキング氏の作品を愛するものたちにとっても、大いに興味のある展覧会になるに違いない。

(彫刻家)



企画発行:東京日本橋高島屋美術部
撮影:江崎義一(東京フォトアーガス)
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