大阪・徳島紀行(出会い編)


 大阪・鳴門ツーリングでは食を楽しむ余裕はありませんでしたが、雨の中を走っている分だけ、色々な人に励まされました。

■元カミナリ族のおっちゃん。
パーキングエリアで最初の休憩をとっていた時、声をかけてきた人。
「この雨の中、姉ちゃん一人でバイクか?」
と、ニコニコと笑いかけてきた初老のおっちゃん。昔はカミナリ族でならしたらしい。若い頃の武勇伝を聞いていると、熱い缶のカフェオレを買ってくれた。
「雨降ってたら寒いやろ。指、ぬくめ」
と、あたたかい言葉。ありがたく頂戴する。
この人、今は自営業を営み、これから岡山のほうまで営業に行くらしいとのこと。飴もわけてもらう。

■これから演習に向かう、陸上自衛隊の班長さん。
2回目の休憩場所で、カーキ色の大型車の軍団と遭遇。そう、陸上自衛隊の人たちである。ベンチで休んでいると、40歳くらいの偉いさん風の自衛隊員に声をかけられる。
「バイクですか?」
「はぁ、まぁ……」
「雨の中、大変ですねぇ」
「はぁ……」
隣に座ったおっちゃんは、学生時代には峠を攻めたおしていたそうで、当時の武勇伝を拝聴。暴走族には入ってなかったけど、地元警察では名前が知られていたと、嬉しそうに語る。
「そのレインコート、防水、むちゃくちゃききそうですねぇ……」
「そりゃ、プロ仕様ですからね。一般販売はしてないですけど」
などと話していると、部下らしい人が数名やってきた。
「移動中にナンパっすか?」
「違う、違う。この人はライダーや」
「あ、そうですか。失礼しました」
何が失礼なんかようわからんまま、隊員さん同志の会話を聞いていると、
「あ、熱い缶コーヒー、1本頼む」
と偉いさんが部下に指示。部下の人が戻り、缶コーヒーを渡す。
「雨で身体冷えてるでしょう」
と、偉いオッチャンからコーヒーをもらう。遠慮なく受け取り、指先をあたためさせてもらいながら、バイク好きの隊員さんたち数名の話を聞く。出発時間になり、自衛隊の一群は出発。ちなみに私の雨合羽は黄色で、自衛隊の人たちはカーキ色の雨合羽姿。たぶん、端から見たら、かなり異様な風景だったことでしょう。まるで猛禽の群の中に迷い込んだヒヨコやん……。自衛隊の人、皆、ええ身体してるし……。

■道路公団の人たち
料金所やゲートを通過する時、皆さんあたたかい励ましの声をかけてくれました。雨の中、女一人でバイクに乗ってるのは、よっぽど不憫に見えるんですね。四輪よりバイクのほうが、料金を支払う際の時間が長くなるので、何度か後ろの車輌にクラクションを鳴らされましたが、係員の人たちは後続車のドライバーに注意をしてくれるんですよ。で、ゆっくりしなさい。焦ったら、本線に出てからも危ないからって。で、「頑張れ」とか「こけたらあかんよ」とか、励ましてくれるんですね。いやぁ、元気出ました。
サービスステーションで瀬戸大橋へのルートを説明してくれたお姉さん。天使のようでした。ものすごく丁寧に道を教えてくれて、備え付けの無料の熱いお茶を煎れてくれるし……。それが仕事だと言えばそれまでですが、地獄に仏に会った気分でした。

◇◇◇

同居人が言うには、女性ライダーは少数派なので親切にしてもらえる確率が高いとか。で、バイクに興味があったり、昔乗ってたりしたら、つい、仏心を出してしまうんだそうな(笑)。「ええよな、女は得や」と言われますし、バイクに乗ってる時に声をかけられることは珍しくないですが、だいたい40歳以上のおっちゃんです。中には実の父親より年長のじいちゃんもいる。年齢的なもんでしょうね。お互いに若くない分、声をかけやすいのかもしれないですな。こんな人との出会いもまた、ツーリングの楽しみなのかもしません。


HOME 司書箱 ツーリング記録