ベートーヴェン:ソナタ 第21番 ハ長調、作品53「ワルトシュタイン」 第3楽章 Beethoven: Sonate No.21 in C major, Op.53, 3rd movement (演奏時間:8分58秒) ファイル:mov形式はこちら ===♪===♪===♪===♪===♪===♪===♪===♪===♪===♪===♪=== 以下には有名ではないけれど皆様にご紹介したい曲を載せています。 | シマノフスキ:練習曲 変ロ短調、作品4-3 Szymanowski: Etude in B flat minor, Op.4-3 シマノフスキは僕の好きな作曲家の一人です。この作品は彼のピアノ曲の中でもとりわけ有名で、非常にロマンティックな作品です。美しくも激しいその抒情性にシマノフスキの音楽の本質を見いだすかのようです。 (演奏時間:5分17秒) ファイル:mov形式はこちら | シューマン:幻想曲 ハ長調、作品17 第3楽章 Schumann: Fantasie in C major, Op.17, 3rd movemant (演奏時間:10分22秒) ファイル:mov形式はこちら シューマンの幻想曲はロマン派の音楽作品全体の中でも最高傑作と呼ばれるに相応しい名曲の一つです。幻想曲は、ベートーヴェンの記念碑を建てる資金集めのために作曲され、作品の中にはベートーヴェンの歌曲やピアノソナタからの引用や影響も見られます。しかし、この作品が音楽的に真に表現しているものは、ベートーヴェンへのオマージュというよりは、むしろ恋人クララへの熱い想いです。後に妻になるクララとシューマンとの間にある愛は、誰もが憧れを抱くほど深く美しいもので知られていますが、幻想曲はシューマンがクララの父に結婚を反対され深い絶望を味わっている時期に作曲されたもので、抑えきれないクララへの想いが爆発しています。 曲は3楽章からなり、各楽章には次のような指示があります。第1楽章は「どこまでも幻想的に、かつ情熱的に」、第2楽章は「程よく常に精力的に」、第3楽章は「ゆっくり、そしてどこまでも静かに穏やかに」。また、曲の冒頭には次のようなシュレーゲルの詩が引用されています。「あらゆる音を貫いて 色とりどりの大地の夢の中に ひとつのやさしい調べが聞こえてくる ひそやかに耳を傾ける者のために」。 第3楽章は夢の中の世界というように僕は感じます。第1楽章に深い絶望と情熱の挟間に激情するシューマンの感情が表れているとすれば、第2楽章は勇気と愛のデュエット。そしてこの第3楽章は、現実ではまだ果たせぬ夢を思い描き、静かで深い幸せに浸っているかのようです。この楽章はところどころに不安を感じさせる響きが登場して闇の中を彷徨うものの、強い意志を持って愛のメロディーを辿っていき、やがてそれは勝利のファンファーレに導かれます。コーダ(曲の最後)の部分は、クララと結ばれたことへの喜びが溢れ嬉々乱舞しているかのようです。そして静かで瞑想的な響きとともに安堵が空中に溶け込んでいくかのように静かに消えていきます。 | | | シューマン:クララの主題による即興曲 ハ長調、作品5 Schumann: Impromptus on a Theme by Clara Wieck in C major, Op.5 この曲は、クララが少女の時に作った曲のテーマによる変奏曲です。あまり広く知られていませんが、シューマンらしさが随所に表れた名曲です。優しい曲想のテーマからはクララの愛らしさを感じ、またその曲の素材を充分に使いこんで作品を作ったシューマンの愛情も深く感じられます。曲はテーマのバスだけを取り出したものから始まりますが、このバスはシューマン自身であり、まるでそこにクララが寄り添ってくるかのように旋律が重なってきます。 (演奏時間:17分59秒) ファイル:mov形式はこちら | シマノフスキ:12の練習曲、作品33 Szymanowski: 12 Etudes, Op.33 (演奏時間:12分29秒) ファイル:mov形式はこちら シマノフスキはポーランドの作曲家でポーランド国内においてはショパンと同じくらい有名な作曲家です。シマノフスキの作品ははっきりと3つの時代区分に分かれ、ロマン派の影響が色濃い第1期と、印象派の中に独自のスタイルを磨く第2期と、ポーランド民族音楽を追求する第3期とに分かれます。 この12の練習曲は第2期の印象派に属するもので、様々なピアノ技巧の模索や独特な和声の使用など新しい試みがたくさん施されています。各曲がattaccaで結ばれ、12曲を通して弾くことで一つの作品となっています。パッと聴くと現代曲っぽくてとっつきにくい印象を受けるかも知れませんが、全体を通して受ける印象はまた違ってきます。どうぞ曲ごとの雰囲気をお楽しみください。 第1曲 急速で無機質 / 第2曲 官能的 / 第3曲 急速な和音 / 第4曲 急速→ゆっくり→急速→ゆっくり / 第5曲 変ホ長調 ゆっくり / 第6曲 和音 / 第7曲 弾んでいる / 第8曲 ゆっくり静か / 第9曲 装飾がついて弾んでいる / 第10曲 流動的で急速 / 第11曲 ゆっくり不思議世界 / 第12曲 急速な3度の重音 | | | 武満徹:雨の樹素描II 〜オリヴィエ・メシアンの追憶に〜 Toru TAKEMITSU: Rain tree sketch 2 ~In memoriam Olivier Messiaen~ この曲はフランスで行われた「オリヴィエ・メシアン追悼演奏会」のために作曲されました。 一つ一つの響きもどことなくメシアン風です。フレーズごとに置かれた間の長さが微妙に変化していくことで独特の時間と空間を生み出しています。まるで、見たこともないような美しい色の雨が、枝垂れた枝に静かに注がれ滴っているかのような、幻想的な雰囲気を醸し出しています。 (演奏時間:3分52秒) ファイル:mov形式はこちら | シマノフスキ:前奏曲 ハ短調、作品1-7 Szymanowski: Prelude in C minor, Op.1-7 (演奏時間:2分08秒) ファイル:mov形式はこちら シマノフスキ:前奏曲 変ホ短調、作品1-8 Szymanowski: Prelude in E flat minor, Op.1-8 (演奏時間:1分45秒) ファイル:mov形式はこちら シマノフスキの最初のピアノ曲(作品1)は9曲からなる前奏曲集です。しかし、シマノフスキは驚くほど早熟で、この前奏曲集を作曲したのは10代の頃なのですが、とてもそんな風には思えないほど大人びた内容の曲ばかりです。彼の初期のピアノ作品からはスクリャービンやショパンの影響が強く感じられ、ハーモニーに対する彼の天才性と相まり、ロマン要素の濃い音楽になっています。 そんな中でも別な意味で注目すべきなのは、作品1-7と作品1-8の2曲です。実はこの2曲はシマノフスキが14才の時の作品で、そこからも彼が精神的に早熟だったことが伺い知れます。 | | | 山田耕筰:春夢 Kousaku YAMADA: Spring dream (演奏時間:4分39秒) ファイル:mov形式はこちら 山田耕筰は日本の近代音楽史上とても重要な作曲家の一人です。「からたちの歌」などの名曲を残したことで有名ですが、滝廉太郎が亡くなった後、明治末期から大正にかけて国際的な活動力を持つ唯一の作曲家でした。そんな山田耕筰でも、ピアノ曲の創作をしていたことは意外に知られておりません。実は彼は日記のように、なにか事があるとピアノ曲を記してその感激や気持ちを足跡のように残しています。彼にとってピアノ音楽は大事なジャンルの一つであったのです。 この曲には彼のオリジナルの戯曲が添えられています。 春の野辺。桜樹の下に若き男一人 逝きし人の小袖を抱えてくづをれてをる。----------蝶からむ。それを追ふ。----------遠くより声ある如く思はれ、声の方へと駆けよる。----------失望と軽い怒で。やるせない気持ちにて。----------草花を投げたり踏んだりする。----------すねて帰る。----------小袖に気づく。----------小袖を強く抱いて 生ける人にものいふ如くかき口説きつつ 立ち舞ふ。 | ショパン:練習曲 ロ短調、作品25-10 Chopin: Etude in B minor, Op.25-10 ショパンのエテュードはどの曲も特徴的なテクニックが終止一貫して用いられていますが、この作品25-10は最初から最後までオクターブだけというオクターブのための練習曲です。フォルテの主部は暗く激しい性格を帯び、うねるように流れます。中間部分には美しい歌が出てきます。これも右手はオクターブだけなのですが、副旋律が現れたりとポリフォニック(多声的)な要素があります。中間部分は和声的にも美しく、激しい暗雲の中にあって束の間の救いを見るようですが、それでもたどり着くところは結局「不安」で、再び元の激しい性格の主部が戻ってきて劇的に曲を閉じます。 (演奏時間:3分51秒) ファイル:mov形式はこちら | | | シューマン:アラベスク ハ長調、作品18 Schumann: Arabesque in C major, Op.18 シューマンの夢想的な一面がよく表れている曲です。アラベスクというのはアラビア風という意味で、建築や工芸品などの装飾に見られる唐草模様のことです。夢見るような美しい、しかし、なにか言いたいことを躊躇しているかのようにも感じられる旋律がどこからともなく流れてきて、それが心地よい主題としてロンド形式で繰り返されます。間には性格の異なった二つの短調の部分が挟まれ、それらは時には繊細で時には激しくもあり、とても叙情的です。 この曲を弾くと、柔らかく優しい気持ちになります。特に曲の最後の部分であるコーダはとても幻想的で美しく、儚さとともになにか暖かいプレゼントを残してくれるかのようです。 (演奏時間:6分56秒) ファイル:mov形式はこちら | 戸田邦雄:箏の音による幻想曲 Kunio TODA: Fantasy on Koto Tunes for piano 日本の箏の旋法を2種類組み合わせて作られた戸田邦雄氏独自の音列に基づいて、和の雰囲気を漂わせる響きを主体に作られています。前半3分30秒くらいまではゆっくりしたテンポで空間に広がる響きを味わうかのような幻想的な部分で、後半は動きが出てきてフーガ風なポリフォニックな書法で書かれています。ピアノという楽器を使っての面白い試みが感じられる作品です。 (演奏時間:8分12秒) ファイル:mov形式はこちら | | |