夢幻世界




大阪ビル一号館(現存せず)
First Osaka building

ダイビルモニュメント


建物名
大阪ビル一号館(現・ダイビル)
First Osaka building
所在地
東京都千代田区内幸町1-2(当時)
1-2,uchisaiwai-chou,Chiyoda-ku,
Tokyo,JAPAN
設計
渡辺節
施工
竹中工務店
竣工
1927年(昭和2年)
構造
鉄筋コンクリート造
Maps

ダイビル壁面

鬼

鬼

ライオン?

鬼
 ここで取り上げる大阪ビル東京分館第一号館は、1987年辺りに解体され、現在は名称もダイビルと改められて新築されている。数年前、当時のビルはもう無いけれど、印象的な鬼のモニュメントは、新しいビル前の広場にいくつか飾られているらしいと聞き、数人の友人達と捜しに出かけた。

 広場に数個のモニュメントが置いてあるだけだろうという、こちらの予想を大きく裏切り、至る所にそれは飾られていた。ある者は噴水に、ある者は目線と同じ高さの壁面に、そして、驚かされたのは新しいビルの壁にまで鬼や豚の顔が張り付いていた。茶色のスクラッチ・タイルで仕上げてあった中世系の旧ビルになら、このような石の彫刻も似合っていただろうし、ましてや彼らは、こんな目線に近い位置ではなく、6〜7階の壁面から、60年あまり、地上を見下ろしていたのである。気に留めない人には視界にも入らなかったことだろう。

 ところが今は、現代的なビルの壁に、まんべんなく配置され、当時とは別種であろう妖しさ満載な雰囲気を醸し出している。初めてこのビルを、なんの予備知識もなく見た人の目には、ビルとモニュメントの取り合わせが奇妙に写るに違いないと思った。だが、旧大阪ビルも、相当変わったビルだったことは、当時の大阪ビルを紹介している鹿島出版会発行、『東京路上博物誌』藤森照信+荒俣宏著、春井裕構成に、詳しく書かれている。

羊
一部、引用してみよう。(以下、文字部分引用)
「一号館の方は、まだはっきりしていて、正面の大アーチの柱の上には猫背にしゃがんだ怪物がいて、その下の柱頭の飾りの中には猫の顔が見える。建物の左右の端部の飾りアーチには、まるで十二支か星座の動物みたいに九匹の動物が順序よく並んでいる。羊、小鳥、シカかユニコーン、クジラかナマズ、ライオン、リス、ペリカン? なんとなく分かるのもあるし、あいまいなのもある。そのアーチの両端を支える持ち送り部分も動物の形をしている。頭の方は羊で体の方はヒヨコといった感じ。」とある。これだけでもかなり派手なビルであるが、「軒の所に二段になってズラリと並びグルリと建物を一周する鬼と豚にかなうもんはない。鬼はこの手の建物に例は少なくないが、豚の方は空前絶後。鬼は魔除け的働きを期待するとして、軒の上の豚にいったい何を期待すればいいんだろう。」その魔除けの役割を担った(?)鬼に、魔実也さんはぶら下がって命拾いした訳ですね(笑)。

 このビルのあまりの奇抜さに、藤森照信氏は、渡辺節設計事務所で、デザインを担当した村野藤吾氏(昭和59年逝去)に、詳細を尋ねた事がある。「村野さんは「もう六十年も前のことだから忘れちゃったが、でも豚ってかわいいでしょ」と、いたずらっぽくほほえまれた。」可愛いを理由に、128体もの、動物のモニュメントを付けた貸しビルって…。

 外側ばかりが、注目されがちな大阪ビルだが、内部は、当時のアメリカ最新式のコアシステム(上下階をつなぐ、エレベーター、階段、給廃水等ビルの中心に一まとめにする方法)を採用し、戦後はGHQの女性将校専用の宿舎として接収された。

 このビルが建て替えられる時には、某新聞社を通じて、金沢の女性が、豚さんの助命(保存)嘆願などもしたらしい。どこか愛嬌のあるビルだったのだろう。是非、現物を見ておきたかった。

なお、今回の参考文献、『東京路上博物誌』
『建築探偵 東奔西走』には、解体前の大阪ビル一号館の写真が掲載されています。

 口から水が…
作 成 日
2000年02月24日
更 新 日
2003年02月16日
参考文献
『東京路上博物誌』
藤森照信+荒俣宏著、春井裕構成鹿島出版会
『建築探偵 東奔西走』
藤森照信著 朝日文庫
『近代建築ガイドブック・関東編』
東京建築探偵団著 鹿島出版会
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